さて突然ですが、「カ°」という文字、どう発音すればいいのかご存知でしょうか?
初めて見る方もいるかもしれませんが、「カ°」は鼻濁音と呼ばれるものになります。どのように読み、どのように発音するのが正しいのか、「鼻濁音」についてポイントをチェックしてみましょう。
鼻濁音「カ°」の読み方
鼻濁音の代表的な発音が「カ°」です。この読み方を聞かれたら、あなたは“どのように発音”しますか?また、どのように読みますか?
正解は「ガ」です。文章だと伝わりづらいのですが、少し鼻にかかったようなガ行の音になります。
鼻濁音とは「濁音の鼻音(鼻から抜ける音)」で、どのように発音すればいいのかを実感しやすいように、たとえば「ダンコ°」を発音する方法を確認してみましょう。
STEP1 まず「ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ」と続けて言ってみる。
STEP2 次に「ダンーゴ、ダンーゴ、ダンーゴ、ダンーゴ、ダンーゴ」と続けて言ってみる。
STEP3 「ダンゴ」と言ったときの「ゴ」は通常の濁音。「ダンーゴ」と言った場合、「ンー」と発音するときに空気が鼻から抜けていくような感じになる。
STEP4 そのあとに続く「ゴ」の発音ははっきり「ゴ」とは言わず、「オッ」に近い発音を意識しながら「ゴ」と発声してみる。「ゴ」を発音するときに鼻から空気が抜けていく。
イメージ的には、「ダンーオ゛ッ」のような発声になります。これが鼻濁音の発声方法です。
鼻濁音とは?
そもそも鼻濁音とは発声方法の一種で、発音するときに「鼻から音を抜きながら話す濁音」のこと。鼻濁音は優しく柔らかい響きが特徴的で、声が美しく上品に聞こえると言われています。
現在は東北地方の一部地域で鼻濁音が使われていますが、ほとんどの日本人が鼻濁音の発声方法を知りません。その理由は、学校教育で鼻濁音について教わらないからです。
子供のとき学ばなければ大人になっても知らないのは当然。国語に鼻濁音の学習内容が組み込まれない限り、この先も鼻濁音は使われることなく埋もれていくでしょう。
近代文化でも鼻濁音を使用する業界は数少なく、歌舞伎や能などの伝統芸能、舞台俳優・女優の指導やボイストレーニング、アナウンサー教育で鼻濁音の発音を教わるくらいです。
必ずしも鼻濁音を習得する必要はありませんが、伝統的な正しい日本語として「上品に」「美しく発声」したいという人は、鼻濁音をマスターすることで聞き心地の良い発音ができるようになるでしょう。
鼻濁音は「ガ」行の発音
基本的に鼻濁音は、「カ°」のように「ガ」行に半濁点を付けた発音表記です。しかし、ザ行やダ行などには鼻濁音の発音表記が確立されていません。
従って、鼻濁音とは基本的に「ガ」行の発音を表す際に用いられる文字です。「ガ」「ギ」「グ」「ゲ」「ゴ」→「カ°」「キ°」「ク°」「ケ°」「コ°」となります。
たとえば、分かりやすい例が次の2つ。
●学校「がっこう」の「が」・・・通常の濁音
●音楽「おんがく」の「が」・・・鼻濁音の「カ°」で発音
この二つは同じ濁音でも種類が異なり、通常の濁音を「破裂音」と言い、鼻濁音と区別できます。具体的には次の二種類に分類されます。
<破裂音の濁音>
学校、銀行、軍隊、外国、強盗、骸骨、げんこつ など
<鼻濁音>
音楽、将棋、もぐら、看護、懺悔、めがね、おにぎり、最後、まつ毛 など
つまり、破裂音は言葉の頭が「ガ」行なのに対し、鼻濁音は「ガ」行が頭文字以外にあります。この違いを知っておくと区別しやすくなりますね。
また、破裂音は鼻をつまんで発音しても無理なく話せますが、鼻濁音の場合は鼻をつまみながら発音すると話しにくいという特徴もあります。
これは、鼻音特有の鼻から抜ける音を塞いでしまうため発音しにくくなるからです。試しに鼻をつまんで「学校」と「音楽」を発音してみると、その違いが分かりますよ。
鼻濁音の発音練習 その1
さてクイズです。次の6つで、鼻濁音で発音する言葉はどれでしょう?
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 大学
- 大学校
- 音楽学校
ややこしいですが、答えは以下になります。
- 小学校=ショーカ°ッコー (鼻濁音)
- 中学校=チューカ°ッコー (鼻濁音)
- 高等学校=コウトーガッコー(濁音・破裂音)
- 大学=ダイカ°ク (鼻濁音)
- 大学校=ダイカ°ッコー (鼻濁音)
- 音楽学校=オンカ°クガッコー(オンカ°クは鼻濁音、ガッコーは濁音・破裂音)
正しい鼻濁音を習得するのは、はっきり言って難しいです。そもそも、これまで鼻濁音を意識して話していないのですから、身についた癖が邪魔をしてしまう場合もあります。
そして何よりも、鼻濁音の区別が難しいです。言葉一つなら見分けも簡単ですが、文になると通常の濁音(破裂音)か、それとも鼻濁音かを見分けることから始まります。
鼻濁音の発音練習 その2
発音(発声)方法ですが、こちらも慣れるまで時間が必要です。基本的なポイントとして覚えておきたいのが「鼻から息が抜ける鼻音」をマスターすること。
<通常の濁音(破裂音)>
がけ・がくぶち・がっこう・がっき・がいこつ・がんこ・ぎんいろ・ぎんなん・ぎざぎざ・ぎりチョコ・ぎんこう・ぐんたい・ぐっすり・ぐらぐら・ぐうぜん・ぐったり・げんかん・げひん・げこう・げんき・げんこう・げつようび・ごみ・ごきぶり・ごぜんごぼう・ごはん・ゴリラ
<鼻濁音(鼻音)>
めがね・かがみ・けがわ・あまがさ・まんが・てがみ・おにぎり・きりぎりす・こむぎ・ふしぎ・やなぎ・こぎつね・てぬぐい・もぐらまぐろ・ゆうぐれ・うぐいす・かぐらざか・にげる・くらげ・まつげ・なげる・わたげ・おみやげ・ひとりごと・なきごえ・りんご・さいご・こくご・まいご
おさらいですが、通常の濁音は「鼻をつまんでも発音しやすく」、鼻濁音は「鼻をつまむと濁った感じで発音に違和感がある(鼻から息が抜けようとする)」という特徴があります。
この性質を踏まえたうえで、発音を練習すると身につきやすくなりますね。
鼻濁音で美しい日本語を
さて今回は、鼻濁音についてポイントをまとめました。
正しい鼻濁音を習得すれば、話す言葉が柔らかくなり、聞き取りやすくなるというメリットがあります。しかし、あまり大げさに強調してしまうと不自然に聞こえる場合もあるのでコントロールが必要です。
「そんなの使えなくても話せるから大丈夫」と思う人もいるでしょうが、上手にマスターするとビジネスシーンや恋愛でも役立つ可能性が大いにある鼻濁音。
聞き手に落ち着きのある良い印象を与えやすくなり、優しい声の響きや言葉の柔らかさ上品さが生まれることでコミュニケーション向上にも効果が期待できます。
鼻濁音は美しい日本語の原点とも言える発音法。興味のある人は、ぜひ参考にして鼻濁音を身につけてみてはいかがでしょうか。
(image by photoAC)
(image by PAKUTASO)
(image by amanaimages123)